読書の時間よ、芝村くん!
『読書の時間よ、芝村くん!』
西村悠の新シリーズ
本の世界に入り込み、旅をすることになった一男二女と一匹が繰り広げる
冒険ファンタジー、プラスラブコメ成分入りです。
謎の文学少女「香坂春奈」、ある事情から春奈と一緒に旅をすることになった「芝村和樹」
和樹の幼なじみで10年ぶりに再会したばかりの「早崎夏耶」
あと一匹は亀の司書ステラさん。
本の世界に発生したマビノギ(ウイルス)をその物語に入って回収し修正する
異世界で繰り広げるファンタジー、
主な語りは「夏耶」の一人称、珍しく女性視点で進行し 主人公と思われた
「和樹」は描かれる側
また、各章の合間に独白として各キャラクターの事情が挿入され
最後の部分で「和樹」視点の進行と、やはり短編にも似た構成を感じさせる一冊です。
シンドバット登場の「千夜一夜物語」部分はコメディ色が強く
世界観を説明する導入部とすれば、その後のアーサー「中世騎士物語」は
そのマビノギが大きくなった本の世界が、
現世にどれだけの影響を与えるのかを示した発展形
ただ、後半「本の住人」である登場人物がマビノギを使う為に
その知識を求めて 和樹をさらうってのは 一気に飛躍する感もあり、
これじゃ本の世界って設定部分があやふやになるのでは?と思ってしまった事も事実。
それに死ぬ事はないにせよ戦闘のシーンはリアルな描写で
一冊の中での温度差が大きい事も不思議に感じさせる所かもしれません。
語りの場面が多い「夏耶」は、自身の感情を表わせる箇所が多いので
恋する一途な乙女的な親近感を感じますが、
同性からの描写である「春奈」の魅力がイマイチかなって…
もう少し不器用な部分を書いてもらえたら嬉しかったですね
最後はステラさんのサービスでやっと悩めるヒロイン?(笑)。